2010年7月24日土曜日

フシタール

ウイグルのフシタール
フシタールは、新疆ウイグルの楽器。

ヘッド部分には鳥の彫刻があって、指板や表板の文様も手がこんでいて、なかなか美しい造り。
ギジェクもそうだけど、エンドピンには膝に載せて固定するためのスタンドがついている。座らないと膝に載せられないから椅子に腰掛けて、楽器は垂直に立てて演奏するわけだ。

胴の底は寄木細工で丸くなっている。これはアラブ圏にあるウードからの伝統。リュートやマンドリンにも採用されていて、表板は平らな板だ。
でも、フシタールは少しだけ違う。
胴の左右はスプーンで切り取ったようにへこんでる。弓奏楽器だからこうなってる。弓がそれぞれの弦にキッチリと接触するするために角度を変える必要があるわけ。弓が胴にぶつからないように切り込みがあるんだね。

Khushtar は定まったカタカナ表記がないので、ホシュタルとかホシタールなどという場合もある。
ちょっと気になるのは最後の tar。tar は、ペルシャあたりでは「弦」の意味があって、最後に tar とつく楽器名は多い。おそらく、フシタールもその昔、アラブやペルシャあたりから伝来しウイグルで独自に完成された楽器なのだろう。

弦鳴楽器(弦楽器)
撥弦楽器(はつげんがっき)
リュート属
チター属
ハープ属
擦弦楽器(さつげんがっき)
弓奏楽器(きゅうそうがっき)
リュート属
チター属
打弦楽器(だげんがっき)
弦を振るわせて音を出す楽器が弦鳴楽器(弦楽器)である。弦を振動させるために、弦にエネルギーを与える方法はいろいろあるのだけれど、まず、3つに分けることにしましょう。
(1) 弦をビンビンと弾く(はじく)方法。撥弦楽器。
(2) 弦をギーギーと擦る(こする)方法。擦弦楽器。
(3) 弦をポンポンと叩く(たたく)方法。打弦楽器。
で、ここで紹介しているのは弓奏楽器。「ゆみでかなでるがっき」ということであって、そのままの表現。それって、弦をこするのだから「擦弦楽器」じゃないですかいな。
そうです。その通り。
じゃあ、なぜわざわざ「弓奏楽器」とかいうのかというと、擦弦楽器でも弓を使わない楽器がある。
例えばハーディーガーディーなんかはそうだね。 ハーディガーディ
ハーディガーディは弦を擦って音を出すのだけれども弓を使わない。円盤をクルクル回して弦をこする。つまり擦弦楽器だけれども弓奏楽器ではない、というわけ。