2010年8月1日日曜日

奚琴(けいきん/ヘグム)

ヘグム胡琴の「胡(こ)」と、奚琴の「奚(けい)」は、東アジアの弓奏楽器の歴史を知る上で重要なキーワードになる。

「胡」は中国北部の民族またはシルクロード西域の人々を意味する。胡琴は、この地域の人々が演奏していた弓式の弦楽器で、胡の付く楽器では二胡はその代表的なものだ。
そして「奚」は、もう少し具体的に、中国北部の遊牧民族である奚族のことである。奚琴は奚族の人々が演奏していた弓式の弦楽器。

中国北部といっても広大な地域である。そもそも、胡琴も奚琴も同じものではなかったか。作りや材質は少々違っていても、このハンマーの形をした弓奏楽器を何種類もの名前で呼ばれることは十分ありえる。
「胡」を付けた名前は中国全土に広まった。そして「奚」が付いた名前は朝鮮半島に残り、現在でも朝鮮では奚琴という名称が使われているのではないだろうか。
そう、奚琴(ヘグム/해금)は朝鮮半島の楽器。二胡とほとんど同じ形をしているが胴の表面は蛇皮ではなく木の板だ。そして、糸巻きは他の弦楽器には見られない特徴がある。糸巻きのペグに相当する太い部分に弦が巻き込まれている。

弦鳴楽器(弦楽器)
撥弦楽器(はつげんがっき)
リュート属
チター属
ハープ属
擦弦楽器(さつげんがっき)
弓奏楽器(きゅうそうがっき)
リュート属
チター属
打弦楽器(だげんがっき)
弦を振るわせて音を出す楽器が弦鳴楽器(弦楽器)である。弦を振動させるために、弦にエネルギーを与える方法はいろいろあるのだけれど、まず、3つに分けることにしましょう。
(1) 弦をビンビンと弾く(はじく)方法。撥弦楽器。
(2) 弦をギーギーと擦る(こする)方法。擦弦楽器。
(3) 弦をポンポンと叩く(たたく)方法。打弦楽器。
で、ここで紹介しているのは弓奏楽器。「ゆみでかなでるがっき」ということであって、そのままの表現。それって、弦をこするのだから「擦弦楽器」じゃないですかいな。
そうです。その通り。
じゃあ、なぜわざわざ「弓奏楽器」とかいうのかというと、擦弦楽器でも弓を使わない楽器がある。
例えばハーディーガーディーなんかはそうだね。 ハーディガーディ
ハーディガーディは弦を擦って音を出すのだけれども弓を使わない。円盤をクルクル回して弦をこする。つまり擦弦楽器だけれども弓奏楽器ではない、というわけ。