「胡」は中国北部の民族またはシルクロード西域の人々を意味する。胡琴は、この地域の人々が演奏していた弓式の弦楽器で、胡の付く楽器では二胡はその代表的なものだ。
そして「奚」は、もう少し具体的に、中国北部の遊牧民族である奚族のことである。奚琴は奚族の人々が演奏していた弓式の弦楽器。
中国北部といっても広大な地域である。そもそも、胡琴も奚琴も同じものではなかったか。作りや材質は少々違っていても、このハンマーの形をした弓奏楽器を何種類もの名前で呼ばれることは十分ありえる。
「胡」を付けた名前は中国全土に広まった。そして「奚」が付いた名前は朝鮮半島に残り、現在でも朝鮮では奚琴という名称が使われているのではないだろうか。
そう、奚琴(ヘグム/해금)は朝鮮半島の楽器。二胡とほとんど同じ形をしているが胴の表面は蛇皮ではなく木の板だ。そして、糸巻きは他の弦楽器には見られない特徴がある。糸巻きのペグに相当する太い部分に弦が巻き込まれている。