2019年1月22日火曜日

中国の弓奏弦楽器

弦を馬の毛でこする という弦楽器(弓奏弦楽器)の発祥の地はどこなんだろう

  • モンゴルあたりで生まれた。
  • いや、ペルシャあたりの西アジアで生まれたんだ。
  • 違う、インドかセイロンあたりに違いない。
  • さらには、エジプトだという意見も。

 あれこれと突き詰めることに熱心な方もおられるようだけど、私としては弓奏弦楽器がどこで生まれたかと特定する必要なんかないんじゃないとも思ったりする。一箇所の特定の場所で生まれたのではない。世界中に音楽好きの人が住んでいるんだから、東西南北、複数の地域で生まれたと考えるほうが自然じゃないかな。

「胡」の意味は

今回登場する中国の弓奏弦楽器はどこからやってきたかという事を考えてみても、なにかよくわからない状態になってしまう。二胡とか京胡、そして総括した名前の胡弓・胡琴とかにある「胡」という文字をキーワードとしてとらまえるてみよう。
 中国からみて西側の地域が「胡」であり、シルクロードの意味合いも含まれているという。ということは「胡」は西アジアのことである。 このあたりをふまえてだろう、二胡の祖先はペルシャあたりから伝来したという記述をよく見かける。
 しかしながら「胡」は、もともと西側ではなく、もっと古くは北側の地域を意味する言葉であったという。それならモンゴルの方角から伝来したということになる。

 楽器ではないが「胡」のつく名前としては、胡椒や胡麻がある。これらの植物を育てて栽培を始めたんはインドらしい。ということは「胡」は中国からみて南のほうを指すのか。 それとも胡椒や胡麻はインド→ペルシャ→中国 と回り回って伝わったから、西側から伝来した植物といことになるのか。
ね、よく分からんでしょう。
二胡(erhu/アルフ/にこ)
二胡(erhu/アルフ/にこ)
 中国の弓奏弦楽器といえば二胡。全体はハンマーの様な形をしており2本の弦が張られている。2本の弦なので二胡である。
弓の馬毛はこの2本の弦の間に挟まっていて、本体と一体になっている。
細長いネックがついているが、指板がなく弦は中に浮いている状態。
なので、ビブラートやスラーを効果的に効かせることができる。クネクネとした独特のメロディを奏でることができるのは、この構造と演奏方法によるものである。

中胡(zhonghu/チョンフー/ちゅうこ)
中胡(zhonghu/チョンフー/ちゅうこ)
 中胡は二胡より少し大きい。

四胡(sihu/スーフ/しこ)
四胡(sihu/スーフ/しこ)
 4本の弦なので四胡だ。馬の毛は4本に絡んで取り付けられている。

京胡(jinghu/ジンフ/きょうこ)
京胡(jinghu/ジンフ/きょうこ)
 小さい。本体胴もネックも竹で作られている。

板胡(banhu/バンフ/ばんこ)
板胡(banhu/バンフ/ばんこ)
 二胡の仲間は音響胴の表面はヘビ皮などを貼り付けてあるが、板胡は木板でできている。

墜胡(zhuihu/ツイフ/ついこ)
墜胡(zhuihu/ツイフ/ついこ)
 指板がないのが二胡の仲間の特徴であるが、墜胡には指板がついている。

革胡(gehu/ゲフ/かくこ)
革胡(gehu/ゲフ/かくこ)
奇妙な形が特徴的。西洋のチェロを意識して中国デザインを取り入れたもの。チェロと同様の指板がついている。

缶詰のような筒型の音響胴に細長いネックを取り付けたスタイルの弓奏弦楽器は、東アジア独特のデザインで、北はトゥバやモンゴル、南はベトナム・タイ・カンボジアでも愛用されている。
弦鳴楽器(弦楽器)
撥弦楽器(はつげんがっき)
リュート属
チター属
ハープ属
擦弦楽器(さつげんがっき)
弓奏楽器(きゅうそうがっき)
リュート属
チター属
打弦楽器(だげんがっき)
弦を振るわせて音を出す楽器が弦鳴楽器(弦楽器)である。弦を振動させるために、弦にエネルギーを与える方法はいろいろあるのだけれど、まず、3つに分けることにしましょう。
(1) 弦をビンビンと弾く(はじく)方法。撥弦楽器。
(2) 弦をギーギーと擦る(こする)方法。擦弦楽器。
(3) 弦をポンポンと叩く(たたく)方法。打弦楽器。
で、ここで紹介しているのは弓奏楽器。「ゆみでかなでるがっき」ということであって、そのままの表現。それって、弦をこするのだから「擦弦楽器」じゃないですかいな。
そうです。その通り。
じゃあ、なぜわざわざ「弓奏楽器」とかいうのかというと、擦弦楽器でも弓を使わない楽器がある。
例えばハーディーガーディーなんかはそうだね。 ハーディガーディ
ハーディガーディは弦を擦って音を出すのだけれども弓を使わない。円盤をクルクル回して弦をこする。つまり擦弦楽器だけれども弓奏楽器ではない、というわけ。