2016年6月15日水曜日

バイオリンとバイオリンみたいな楽器

弓で弦を擦る楽器は、世界中に存在する。
ヨーロッパの弓奏楽器は西アジアから伝わり、ヨーロッパで独自に発展した。そして、バイオリンは肩・顎で支えることでハイポジションでの演奏が可能となり高度なテクニックも開発された。弓奏楽器は縦に構えるのが一般的で、肩・顎で支えるのは地球規模で見ると特別な構え。この構えと演奏方法が、バイオリンとその仲間を世界標準にした。
さて、このバイオリンが弓奏楽器の代表になるまでに、ヨーロッパではいろいろな楽器が生まれた。歴史を振り返っていろいろな古楽器を見てみよう。

レベック (rebec)
レベック(rebec)
レベック(rebec)
ヨーロッパの古楽器で、主に16世紀ごろにダンスの伴奏などに使われた。顎に挟むのではなく、胸・腕で支えたため高度な演奏はできなかったが、そもそも高度な演奏は必要なかったのかもしれない。
胴体の削り込んで底が丸っこくなっている。

リラ・ダ・ブラッチョ (lira da braccio)
リラ・ダ・ブラッチョ(lira da braccio)
リラ・ダ・ブラッチョ(lira da braccio)
ヨーロッパの古楽器。糸巻きがヘッド部分に垂直に差し込まれている弦楽器をリラと呼んでいた。腕(braccio)で支えるリラということで この名がある。ネックの隣にオープンの共鳴弦が張られている。

ビオラ・ダ・モーレ (viola d'amore)
ビオラ・ダ・モーレ(viola d'amore)
ビオラ・ダ・モーレ(viola d'amore)
17世紀後半によく使われていたヨーロッパの古楽器。amoreは「愛」のことであり「愛のヴィオラ」という名を持つ。メロディ弦は6本~7本で、指板の下に共鳴弦が張られている。

ビオロンチェロ・ダ・スパッラ(violoncello da spalla)
ビオロン チェロ ダ スパッラ(violoncello da spalla)
ビオロン チェロ ダ スパッラ(violoncello da spalla)
18世紀ごろの古楽器。低音の楽器で大柄なので顎では挟めない。spallaは「肩」の意味なので、肩で支えるチェロという名だ。バッハの「無伴奏チェロ組曲」は、この楽器のために書かれたものと云われている。
ヴィオラ・ポンポーサ(viola pomposa)とも。

ハーディング・フェーレ (harding fele)
ハーディング・フェーレ(hardingfele)
ハーディング・フェーレ(hardingfele)
ノルウェーの民族楽器。ハルダンゲル地方で生まれて継承されているので、英語ではハルダンゲル・フィドルという名で通っている。現在のバイオリンとほぼ同じ大きさだけれども、指板の下に共鳴弦が張られている。

バイオリン (violin)
バイオリン(violin)
バイオリン(violin)
現在、弓奏楽器の代表となっている いわゆるバイオリン。
17世紀から18世紀にかけてイタリアで多くの卓越したバイオリン製作者が活躍した。そのころの大きさ・形状・構造は現在のバイオリンに引き継がれている。

ストロー・バイオリン (stroh violin)
ストロー・バイオリン(strohviolin)
ストロー・バイオリン(strohviolin)
20世紀のはじめに開発されたバイオリン。金属の缶とホーンで音を響かせるようになっている。

弦鳴楽器(弦楽器)
撥弦楽器(はつげんがっき)
リュート属
チター属
ハープ属
擦弦楽器(さつげんがっき)
弓奏楽器(きゅうそうがっき)
リュート属
チター属
打弦楽器(だげんがっき)
弦を振るわせて音を出す楽器が弦鳴楽器(弦楽器)である。弦を振動させるために、弦にエネルギーを与える方法はいろいろあるのだけれど、まず、3つに分けることにしましょう。
(1) 弦をビンビンと弾く(はじく)方法。撥弦楽器。
(2) 弦をギーギーと擦る(こする)方法。擦弦楽器。
(3) 弦をポンポンと叩く(たたく)方法。打弦楽器。
で、ここで紹介しているのは弓奏楽器。「ゆみでかなでるがっき」ということであって、そのままの表現。それって、弦をこするのだから「擦弦楽器」じゃないですかいな。
そうです。その通り。
じゃあ、なぜわざわざ「弓奏楽器」とかいうのかというと、擦弦楽器でも弓を使わない楽器がある。
例えばハーディーガーディーなんかはそうだね。 ハーディガーディ
ハーディガーディは弦を擦って音を出すのだけれども弓を使わない。円盤をクルクル回して弦をこする。つまり擦弦楽器だけれども弓奏楽器ではない、というわけ。